近視進行抑制治療
強度な近視は、緑内障、網膜剥離、黄斑疾患、白内障など、将来的に様々な難治性の眼科疾患につながります。
我が国のみならず世界中で近視人口が増加の一途をたどっております。
同じ疾患でも、強い近視が背景にある場合、治療による効果が十分に得られず、視力がとても低くなったり失明に至ってしまうこともあります。私はこれまでの診療の中において、そのようなケースを幾度となく目の当たりにしてきた経験から、近視の人口が増加することに伴い、将来的に強い近視の人口も増加し、その結果として失明の危機にさらされてしまう患者さんの数が増えてしまうことに危機感を覚えています。それ故に、近視、強い近視の子供を一人でも減らしてあげたいという思いを抱いております。
近視は、親御さんから素因が引き継がれる、いわゆる遺伝も要因の一つと考えられていますが、最近の近視人口の増加は、環境要因も大きく関わっていると考えられています。現代の子供たちが、室内で過ごす時間が長くなってきたことやゲーム機やタブレットやスマートフォンなど近距離でものを見続ける時間が長くなったことが要因ではないかとも言われています。眼に近づけてものを見ると、眼球の中で外部から入ってきた映像の情報を受け取る網膜に対して、映像が奥に像を結ぶことになり、その刺激が眼の軸を伸ばすという変化(眼球が縦に長く成長する、眼球が大きくなる)をもたらし、その結果として近視が進行すると考えられています。
近視になると、元に戻すことはできず、一般的には身長の伸びが止まるくらいまで進行し続けると言われています(実際にはそれ以降も進行することはあります)。
当院では、小児の近視の進行を抑制する治療として、低濃度アトロピン(マイオピン)点眼、オルソケラトロジー(就寝中装用コンタクトレンズ)、サプリメント(クロセチン)などに取り組んでおります。低濃度アトロピン点眼とオルソケラトロジーは自由診療です。サプリメントは当院受付窓口で提供いたしております。
最近の報告では、低濃度アトロピン点眼とオルソケラトロジーを合わせて行うことで更に強い近視進行抑制効果が得られる、いわゆる相乗効果も期待できると言われています。
オホーツク地域のお子様にも、近視を進行させないための最先端の治療を受けていただける選択肢を提供したいという強い思いから、当院ではこれらの治療に積極的に取り組んでおります。
普段の生活においては、「1日2時間以上屋外で過ごすこと」や「読書・スマホなどの近くを見る作業は30センチ以上の距離を保ち、20分に1回20秒程度は遠く(20フィート(6メートル)以上)を見ること(20-20-20ルール)」などが、近視を予防するために推奨されています。