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感謝

[2024.08.31]

 2024年9月2日で、開院して3年10か月が経過しました。この日までに、11860名の新規の患者様が来院され、3601件の手術を施行させていただきました。

 今年の夏も、本当に暑かったですね。また、ここ数日は、台風による大雨の影響で本州の各地で洪水や浸水などの大きな被害が出ているというニュースを多く耳にします。毎日のように、気象について「観測史上最大の」とか「記録的な」といった言葉が聞かれます。

 私が住んでいる北見市、オホーツク管内は、全国的に見ても、地震なども含め自然災害の少ない地域と言われておりますが、全国各地で過去に例を見ないような自然災害が多発している昨今において、いつ自然災害が襲ってくるかわかりません。

 9月1日は『防災の日』でした。いざというときに備えて、自分の住んでいる地域(自宅のみならず、勤務している場所や出張先、旅行先も含めて)の『ハザードマップ』(北見市ハザードマップ)を確認しておくことは、大変重要なことなのだそうです。これから居を構えようとするのであれば危険な地域は避ける、すでに居を構えていて警戒すべき地域に入っている場合はいざというときのための備えをしておく、避難する場所を想定しておくといった意識が非常に重要なことなのだそうです。

 さて、先日、札幌市で開催されました『北海道マラソン2024』に参加してまいりました。残念ながら今回も(いつものことながら)自分の目標タイムをクリアすることはできませんでしたが、なんとか通算25回目のフルマラソン42.195km完走を果たすことができました。

 北海道マラソンは、全国で唯一、真夏の時期に開催される、日本陸連(日本陸上競技連盟)公認の本格的なマラソン大会です。マラソンに適した気温は10℃前後と言われており、それ以上に気温が上がれば上がるほどタイムも落ちると言われています(今大会の気温はスタート時24.6℃、最高気温28.9℃)。にもかかわらず、気温の高いこの時期に開催されるのは、この大会が、1984年のロサンゼルスオリンピックと1988年のソウルオリンピックのマラソン競技において、日本選手が良い成績を残せなかったため、夏場のマラソンに強い選手を育成、強化、発掘することを目的に成り立っているからなのだそうです。つまり、“わざと”マラソンには不向きな過酷な時期に開催している大会というわけなのです。

 特に近年は気候変動で、北海道とはいえ、かなりの高い気温の中でのレースとなっており、「なぜ、こんな危険な時期にフルマラソンを開催するんだ!」という痛烈な批判の声も数多く耳にするようになりました。しかしながら、参加するランナーの多くは、過酷なレースであることは重々承知の上で参加しています。そのために、高温の中でのトレーニングもたくさん積んで、対策を十分とった上で参加しています。暑くて苦しくてタイムも出にくい条件ですが、それ故に、他の時期のレースでは得られない、完走後の特別な達成感が得られることが人気の秘密だと思っています。

 ちなみに、眼科医の立場としては、マラソン、特に夏場のマラソンにおいて、ランナーが注意すべき点は、紫外線対策であると考えています。

 紫外線は、白内障(眼球の中においてピント合わせの役割を担うレンズに当たる水晶体が濁る現象で、視力低下をきたします。)や翼状片(眼球表面において白目の部分から茶目(虹彩)、さらに中心の黒目(瞳孔)に向かって伸びてくる三角形のような形をした膜で、眼球の外見に影響を与え、強い乱視(眼球の前方部分にある角膜という透明な膜の変形による視力低下)の原因となり、黒目まで伸びてしまうと著しい視力低下をきたします。)、黄斑変性(眼球の内側にある網膜という神経でできた光を受け取る膜(カメラでいうとフィルムに当たる部分)の中心部分が傷んでしまい、著しい視力低下をきたす疾患)の原因になると言われています。

 マラソンでは、夏に限らず、長時間にわたりに日光にさらされることになりますので、帽子とサングラスの着用は必須です。大会に参加するランナーは、日頃からコツコツとランニングの練習を行っているはずですから、紫外線の暴露が蓄積されることになりますので、大会のみならず日頃から紫外線対策は重要です。

 サングラスは、ピンからキリまでという感じで様々なものが存在しますが、選択するうえで重視すべきは、紫外線カットの機能が極力強いものであるという点です。99%とか100%というレベルのものを選択するべきです。意外だと思われるかもしれませんが、色の濃いレンズが良いというわけではありません。色の濃いものでも紫外線カットの機能が低いものもありますし、色が濃いと眼球の黒目(瞳孔)が広がってしまい、かえって眼球の中に入り込む日光の量が多くなってしまい紫外線暴露が増えてしまうと考えられています。

 また、専門外ですが、皮膚の紫外線暴露、いわゆる日焼けのリスクも忘れてはなりません。皮膚が紫外線にさらされると、美容の点では将来的なシミやシワやたるみにつながると言われていますし、皮膚がんのリスクも懸念されます。できるだけ効果の強い日焼け止めを皮膚に塗って皮膚を守る必要があります。もちろん私も皮膚の紫外線対策は重視しており、トライアスロンの選手も愛用されている汗をかいても落ちにくい強力な日焼け止めを厚塗り(皮膚科の先生曰く、できるだけ厚めに塗ることが、紫外線対策のコツなのだそうです。)してレースに臨むようにしております。

 以上述べさせていただいた紫外線対策は、マラソンに参加される方に限らず、長時間屋外で過ごす機会の多い方においても参考にしていただきたいことであります。ちなみに、当院で、ドライアイ、マイボーム腺機能不全、霰粒腫(ものもらい)に対する治療のために設置しているIPL(集中制御パルス光療法)は、皮膚のシミを薄くする治療も可能です。安全性も高く有効性の高い治療です。

 さらに、最近の報告では、熱中症になった方は白内障が進行しやすいとも言われており、紫外線対策のみならず、夏場のマラソンでは、熱中症対策も重要ということが言えそうです。

 さて、今大会、私個人としては、昨年の大会で北海道マラソンとしての自己ベスト記録を達成し、今年もさらなる記録更新を目標にレースに臨みました。前半は、昨年同様、定石通り抑え気味のペースで走り、中間地点を過ぎてからの体感は、昨年よりも余裕がある感じでしたので、後半ペースアップも狙えると目論んでいたのですが、30キロを過ぎてから大失速(結局いつものあるあるパターンです。)してしまい、目標達成とはいきませんでした。

 しかしながら、今大会は、これまでにない満足感が得られた大会でもありました。

 北海道マラソンのみならず、マラソン大会の開催には、大会ボランティアの方の協力なくしては成り立ちません。ちなみに、ボランティアは、個人またはグループが、社会奉仕のために時間と労力を無償提供する自発的行為、又はその無償労働者という意味なのだそうです。今回の北海道マラソンに参加したランナーは約2万人でしたが、それに対して、4千人以上のボランティアの方が参加され大会を支えて下さったそうです。

 今回は、そのボランティアに私の家族も参加しておりました。私の家族は給水(ランナーの飲み水をコップに入れて並べたり手渡しをする)の仕事に携わっており、私もスタート前にあらかじめ、家族が配置される場所をチェックしていましたので、会うことができることを楽しみに(今大会は、自分の心の中では、それが最大の楽しみであり目的であったのかもしれません。)、走っておりました。

 2万人のランナーが、次から次へと給水所に立ち寄って、水の入ったコップを取っていきますし、気温も高いので、一人一人のランナーが取るコップの数も他の大会よりも多くなりますから、ボランティアの方々は、ランナーに水が不足なくいきわたるようにするために、大忙しで必死にお仕事をされます(まさに“戦場のような”という表現が当てはまる雰囲気かもしれません。)。

 ボランティアに参加した家族は大忙しで仕事をしているでしょうし(給水のテーブルの最前線で仕事をしているとは限らず、後方で水を汲むなどの仕事をしているかもしれません。)、ランナーの私も給水所では後ろのランナーとの衝突を避けるためにランナー全体の流れに乗っていなければならず、立ち止まることができない中で、会うことは難しいかとも思っていたのですが、運良く、タイミング良く、給水テーブルの最前線にいた家族に、ほんの一瞬でしたが、顔を合わせ、目を合わせ、声を掛けることができました。

 参加した家族のみならず、その仲間の方々に、ボランティアのお仕事で支えてくれることへの感謝の気持ちを少しでも伝えようと、レース前日の宿泊先で、即席でビニール袋にマジックペンで感謝のメッセージを書き、ポケットに携えておりました。給水所に近づいたところで、ビニール袋を広げたのですが、こちらも、走りながらで、コップも持ちながら、バタバタしながら、汗だらけで、まさにグタグタの状態でしたので、メッセージが家族を含めどれだけの人の目に入ったかはわかりませんが・・・。

 今大会では、慣れないことをしてしまいましたが、私がマラソンの大会で、大会を支えて下さるボランティアの方々に向けての感謝の気持ちを表すために、いつもしようと心掛けていことがあります。それは、ゴールした直後に、後ろを振り返ってコースに向かって一礼するということです。

 初めてマラソンを完走した時、ゴール後に振り返ってコースに向かって一礼するランナーの方の姿を多く見かけ、自分も真似をするようになりました。ランナーの中には、ボランティアの方も含め、沿道の応援の方々に、「ありがとう。」「ありがとうございます。」と何度も何度も声を出してお礼を言いながら走っている方もいらっしゃいます。私もたまに、走りながら手を振ったり、笑顔で応えたりすることはありますが、余裕がなくて何度もいうわけにはいかず、そのようなランナーの方を素晴らしいなと思いながら見ています。

 ボランティアの方は、小学生から大学生までの学生さんも多いのですが、そういった若い方が、一生懸命にお仕事をされ、忙しい中でも「頑張ってください!」と声を張り上げて応援して下さる姿を目の当たりにすると、感謝の気持ちが溢れずにはいられません。疲れていて苦しくても、本当に元気が出ますし、勇気をもらえます。心が震えて、涙が溢れそうにもなります。

 最近の日本は、昔に比べて、個人主義の人が増え、自分にとって利益にならないことには興味を示さない、やりたがらない、報酬が得られない仕事は一切しないといった人が増えており、世界中の人々から称賛されてきた日本人の美徳というものが損なわれてきているのではないかとの声も聞かれますが、ボランティアに参加されているたくさんの学生さんの姿を見ると、「まだまだ日本も捨てたもんじゃない。」「この国にも多くの希望の光はあるんだ。」という気持ちにさせてくれます。

 ボランティアの精神を持っている人は、世の中のたくさんの人を救うことができるポテンシャルを持っているはずです。学生さんたちが、将来、様々な分野で社会貢献してくれることを大いに期待しておりますし、それができると確信しています。是非とも、これからもボランティア精神を大切に生きていって欲しいと思います。

 最後に、改めて今大会を支えて下さった全てのスタッフの皆様に心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました!

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