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最新の緑内障治療薬『ロープレッサ』

[2026.08.23]

 2026年8月2日で、開院して5年9か月が経過しました。この日までに、16410名の新規の患者様が来院され、5402件の手術を施行させていただきました。

 当院では、この度、緑内障の最新の治療薬『ロープレッサ』を採用いたしました。

 緑内障は、眼球の後方部分にある網膜や視神経を構成している神経細胞が減少して視野が狭くなり、失明に至ってしまうこともある眼の病気です。たとえ失明に至らなくても、視野が狭くなれば、自動車の運転も含め、日常生活に大きな支障が出てしまいます。

 緑内障の治療は、眼圧を下げることが基本となります。点眼薬による治療が基本です。まず1種類の点眼薬から開始し、それでも進行を抑えることができなければ、点眼薬の種類を変更したり、2種類、3種類と点眼薬の種類を増やします。医学の進歩、眼科医、研究者、製薬会社の日々の地道な努力により、現在はたくさんの種類の緑内障点眼薬が存在していますが、この度、参天製薬様から新しい緑内障点眼薬『ロープレッサ』が登場いたしました。

 『ロープレッサ』は、これまでの緑内障点眼薬とは異なる2種類の作用機序(薬が効く仕組み)を持っています。2種類の作用機序は、①ROCK阻害作用と②ノルエピネフリントランスポーター阻害作用というものです。

 ①ROCK阻害作用とは、ROCK(Rho(ロー)キナーゼ)という体の中にある酵素(体の中で働く小さなタンパク質)の働きを抑えるというものです。

 眼球の中には房水(ぼうすい)という透明な液体が常に循環しています。この房水は、目の栄養を運んだあと、線維柱帯(せんいちゅうたい)という排水口を通って目の外へ流れ出ていきます。ROCKという酵素は、この排水口の周りの組織を縮めるたり固くするように働く性質があります。ちょうど、緑内障の方の多くは、この排水口がうまく開かず、房水がスムーズに流れ出ていかないために眼圧(眼の中の圧力)が上がってしまいます。

 ROCKの働きを抑える ことで、排水口の周りの組織がゆるみ、房水が流れ出やすくなり、眼圧が下がるという仕組みです。

 ②ノルエピネフリントランスポーター阻害作用とは、ノルエピネフリンという体の中で神経から神経へ情報を伝える伝達物質の輸送体(トランスポーター)の働きを抑えるというものです。

 ノルエピネフリンは、交感神経(体を活動的にする神経)が働くときに使われる物質で、血管を収縮させたり、心拍を上げたりする働きがあります。眼の中では、房水(眼の中を潤す透明な液体)が作られる量にも関わっています。神経が情報を伝えるとき、神経の末端からノルエピネフリンが放出されます。役目を終えたノルエピネフリンは、トランスポーターという回収装置によって、また神経の中に取り込まれ(リサイクルされ)ます。

 ノルエピネフリントランスポーターの働きを抑えることで、 神経の周りにノルエピネフリンが多く残った状態になり、その結果、房水を作る組織(毛様体)の働きが調整され、房水が作られる量そのものが少なくなるという仕組みで眼圧を下げます。

 つまり『ロープレッサ』は①「排水口を広げる」+②「作られる水の量自体を減らす」という二段構えで緑内障に効くということなのです。

 これまでの緑内障治療薬にはない新しい作用機序を持った点眼薬ですので、従来の緑内障治療薬をいろいろ使用しても、病気の進行を抑えられなかった患者さんに、この点眼薬を使用することで進行を食い止めることができる可能性もあります。

 さらには、点眼回数が1日1回で済むという点眼薬(緑内障点眼薬には1日1回で良いものと1日2回点眼しなければならないものがあります)ですので、その点も患者さんにとっても医療者側にとってもありがたいお薬です。

 緑内障は、生涯にわたって治療を続けていかなければならない病気ですので、目薬を毎日1回入れるのか2回入れるのかで、患者さんの日々のストレスが大きく異なり、治療の継続に大きな影響を与えることが分かっています。実際のところ、目薬を毎日続けることは大変なことですので、私自身も患者さんに目薬をお出しする際には、できるだけ少ない回数、少ない種類で済むようにということは常に心掛けております。

 緑内障の治療の選択肢が、また一つ増えたことを本当に嬉しく思います。

 

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