メニュー

球春到来と眼科医の心配事

[2024.05.22]

 2024年5月2日で、開院して3年6か月が経過しました。この日までに、11126名の新規の患者様が来院され、3277件の手術(このうち白内障手術は3222件)を施行させていただきました。

 先日、ご縁があって、春季北海道高等学校野球大会北見支部予選の試合を観戦させていただきました。

 プロ野球は、すでに開幕し、北海道日本ハムファイターズの躍進ぶりに心が踊らされる日々ですが、私の中では、周りの雪が解け、暖かさを感じられるようになり、高校野球のニュースを目にするようになると、春の訪れを実感します。現地で高校野球の公式戦を観戦するのは久しぶりで、感慨深いものがありました。

 高校生の公式戦の大会は、年間で春、夏、秋の3大会、高校に入学してから卒業するまでの3年間に参加できるのは、合計で8大会です。全てトーナメント方式なので、負けたら終わりですから、初戦で敗れれば1試合で終了。部員が少なかったり、よっぽど野球センスがある場合を除けば、1年生から試合に出場できることはまれなことが多いですし、多くの学生さんは、最上級生になって初めてレギュラーメンバーとして試合に出場することになるでしょうから、高校3年間における出場機会というのは、本当にごく限られた機会であるはずです。さらにはレギュラーメンバーでなければ、出場機会はたった1球だけかもしれませんし、ベンチに入ることが出来なければ出場機会はゼロです。

 高校生たちのプレーをスタンドから観ながら、そんな背景を想像すると、一球一球に対するプレーがいかに尊いものであるかを感じずにはいられません。その一瞬のために、毎日毎日、膨大な時間を費やしていることを想像すると、胸が締め付けられるような思いになります。

 仮に、出場機会に恵まれない高校3年間だったとしても、その中で経験したことは、長い人生において貴重な財産となることは間違いありません。人生50年以上を歩んできた私が(たかだか50年にすぎませんが)、周りを見渡して振り返ってみると、むしろそのようなつらい経験や悔しい思いをされた方のほうが、次こそ頑張ろうと気持ちになれるでしょうし、つらい立場の人の気持ちを理解することができ、最終的には社会において人の役に立てるような重要なポジションに就かれているように思います。

 人生において、挫折を味わないことは理想ですが、後から大きな挫折を味わうよりは、若いうちに挫折を味わっていた方が、早い段階で軌道修正ができるので、後々大きな挫折を回避することができるようにも思います。

 草野球ながら少しばかり野球を“かじった”ことのある私からすると、高校球児が当たり前のように、ゴロやフライを捕り、狙ったところにボールを投げ、時速百何十キロで投げられた小さなボールを細いバットで鋭く打ち返すことがどんなに難しいこと(センスのある方は、特に何も考えることなく当たり前にプレーができてしまうそうですが・・・。)であるかがわかりますので、一つ一つのプレーに感動を覚えます。

 眼科医として仕事をするようになってから、野球に限らずスポーツを見るたびに、頭によぎることがあります。それは、目の怪我のことです。

 眼科医をしていれば、スポーツをしている最中に目を怪我した患者さんに遭遇することは必ずあり、軽症から重症まで(失明の危機にさらされるようなものまで)、程度も様々です。

 野球では、ボールが勢いよく目に当たることによって、眼球自体がダメージを受けたり(眼球打撲、さらに細かく具体的には、眼球内の出血、網膜に穴ができる、網膜がはがれるなどが生じることなどがあり、最も重症なケースでは眼球が破裂することもあります。眼球破裂は失明に直結しうる状態です。)、眼球が収まっている眼窩という骨でできた部屋が破損する(眼窩骨折、重症例では、眼球の位置がずれたり動きが悪くなって、ものが二重に見えてしまうという後遺症が残ることもあります。)ことなどが代表的です。

 重症であれば大きな後遺症を残し、その後のスポーツにおけるパフォーマンスへの影響のみならず、その後の人生に大きな影響を残すこともありますので、スポーツ中の怪我から目を守る意識はとても重要です。

 眼科医の立場からは、野球ボールによる目の怪我を予防するために、スポーツ用眼鏡(スポーツゴーグル)の装用が、かねてから推奨されています。特にポリカーボネートという特殊なプラスチックが耐衝撃性に優れており、ゴーグルのみならず、フェイスガードなど、野球に限らず様々なスポーツの怪我の予防のための装具に応用されています。

 高校球児がスポーツゴーグルを装用している姿は全くと言っていいほど見かけません(最近はプロ野球の選手がよく使っている、プロテクターを腕や脚に着けている姿は見かけるようになりましたが)ので、一つ一つのプレーを見るたびに、「もしボールが不幸にして眼球を直撃してしまったら・・・。何とか怪我無く無事に試合を終えて欲しい。」と心配をしてしまう私は、もはや職業病と言ってもよいでしょう。様々な患者さんのケースを目の当たりにしてきた経験があるが故に、常に最悪の事態を想定してしまうのです。

 球技や格闘技など(ボールが直接の原因にならなくとも、相手選手の指先、肘、膝などが目に入ることによって大きな怪我に至ることも多々あります。)、ありとあらゆるスポーツにおいて、目の怪我をする可能性はついて回りますので、万が一のために、予防のための装具を常に着用することは理想ではあります(着用に伴うパフォーマンスの低下や費用の問題などもあり、普及へのハードルはかなり高いと思われますが・・・。)。

 スポーツゴーグルは、最近ではインターネットでの通信販売でも購入できますが、眼鏡専門店(量販店ではなく)でよく相談されたうえで、多少値が張ってもしっかりとしたものを購入されるのが良いと思います。

 

 

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME