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老視の治療

[2024.06.02]

 2024年6月2日で、開院して3年7か月が経過しました。この日までに、11303名の新規の患者様が来院され、3362件の手術(このうち白内障手術は3306件)を施行させていただきました。

 5月の当院は、ゴールデンウイークの大型連休の後、連休中の休診の余波の影響だと思いますが、外来が大変混み合いました。午前と午後の外来の受け付け患者さんの合計が100名を超える日も続きました。患者さんには、待ち時間が長くなることで貴重な時間を奪ってしまい、ご迷惑をおかけすることが多く、大変申し訳なく思っております。その一方で、当院スタッフも遅い時間まで、患者さんに満足していただける医療を提供しながら、且つ待ち時間を軽減するために、スムーズな外来診療を意識しながら、フル回転で頑張ってくれました。スタッフの皆さんには、いつものことながら感謝の気持ちでいっぱいです。

 さて今回は、老視のお話。老視は眼の年齢的な変化によって、ものを見る際にピントを合わせる力が衰え、近くを見ることが困難になってくる状態のことを言います。具体的には、眼球においてピント合わせの役割を担っているレンズに当たる水晶体という部分が硬くなってくることによって生じると考えられています。一般的には、老眼という言い方のほうが馴染みがあるかもしれませんね。個人差はありますが、多くの場合、老視は40歳を過ぎると徐々に自覚し始め、徐々に進行していきます。

 若いころは何の不自由もなく見えていた近くの文字にピントが合わなくなり、本や新聞、携帯電話、スマートフォンなどの文字、絵、写真などが見えづらくなり、手元で文字を書くことも行いづらくなります。はじめは、距離を離すことで対応できますが、やがて老眼鏡(近用眼鏡、読書用眼鏡などとも言います)をかけたり、拡大鏡を用いなければ見えなくなります。

 残念ながら、現代の医学において、この老眼を防ぐ方法は存在せず、程度に合わせて、近用眼鏡、遠近両用眼鏡、遠近両用コンタクトレンズなどを装用して対応するのが現状です。

 ただし、遠近両用眼鏡、遠近両用コンタクトレンズは、研究者の努力のおかげで日進月歩で進化を遂げ、優れた製品が世の中に出てきていて、私たちはその恩恵を受けることができます。特に遠近両用眼鏡は、各レンズメーカーから様々な種類のものが開発され、患者さんの様々なニーズに応えられるようになっております

 一般的に、眼科の病院での眼鏡処方においては、レンズの度数を決めるところまでは行いますが、レンズの細かい種類までの選択をすることはできませんので、細かなレンズの種類の選択は、各眼鏡店にお任せする部分になります。

 以前、眼鏡店の方からレンズの種類についてのお話を伺った際に、その種類の豊富さに驚いた記憶があります。老視矯正の眼鏡を作られる際には、是非とも眼鏡専門店の担当の方のお力を借りて、満足度の高い眼鏡を購入されるのが良いと思います。

 遠近両用眼鏡だけではなく、中近両用眼鏡や近近両用眼鏡(近い距離の中で、より近い距離との使い分けができる)なども存在します。様々な場面に合わせて、複数の眼鏡を所有し使い分けることで、お仕事やご趣味において高いパフォーマンスを発揮したり、さらにフレームのデザインにも変化を持たせて、おしゃれを楽しんだりするのも良いかもしれません。

 海外では、老視を軽減する目薬が承認され、実際に点眼による治療が行われている国もあるようです(まだ日本では承認されておりません)。ただし、その目薬の効果は、瞳孔(黒目)を小さくする(縮める)ことによって近くのものにピントを合わせやすくするものです。あくまでも老視を和らげるものであり、老視を根本的に治すものではありません。しかしながら、医学の進歩は目覚ましく、上記とは違うアプローチで薬の研究もなされているようですので、もしかすると将来的に根本的な治療薬も出現するかもしれません。

 老視と共に眼の年齢的な変化として避けて通れないものとして、白内障があります。白内障は水晶体が、濁ってしまう現象のことです。個人差はありますが、50歳を過ぎると徐々に目立ってきます。視力に影響を与える眼の老化現象としては、初めに老視が出て、続いて白内障が出るという順序になります。

 白内障がある程度進んでくると、近くのみならず遠くを見る場合にも見えづらさが生じ、眼鏡をいくら強くしても視力が上がらないという状態に陥ります。そこまで進行すると手術で治療する以外は対応法がありません。

 白内障の手術では、白内障で濁った水晶体を取り除いて、透明な人工の水晶体(眼内レンズ)との入れ替えを行いますが、その人工水晶体(眼内レンズ)において、老視を軽減できる特殊な機能を持った種類のものが存在します。その眼内レンズは、多焦点眼内レンズと呼ばれるもので、白内障手術を行った後は、眼鏡無しで遠くから近くまでピントを合わせてみることができます。白内障の治療をするのと同時に老視の治療もできるということにもなります。

 多焦点眼内レンズは、現在のところ、保険診療内では行うことができず、選定療養という種類の治療となりますので、通常の保険診療での治療費に追加で、片眼数十万(両眼ならその倍)の金額の費用が掛かることになります。また、多焦点レンズにはその他の欠点もあり、老視の治療効果はありますが、「決して、老視が生じる前の若い頃の見え方に戻るわけではない。」ということはご理解いただかなければなりません。

 医学の進歩と共に眼内レンズも日進月歩です。将来、眼内レンズそのものの進化、あるいはレンズ以外の部分での医療の進化によって、人間の眼が若い頃の見え方を取り戻すことができるような時代が来ることを願ってやみません。

 

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