若者たちへのメッセージ
先日、ある中学校の生徒さんから、眼科医という職業についてのインタビューを受ける機会がありました。
以下に、生徒さんからの質問とそれに対する私の返答をできるだけ忠実に記載いたしました(返答した内容は、あくまでも私個人の見解ですので、正解とは限りません。いろいろ賛否はあると思います。その点についてはご理解、ご了承願います。)。
口下手な私の大変稚拙な返答で申し訳ないのですが、これから眼科医に限らず医療に携わることを目指す、あるいは選択肢として考えている若い方たちの将来へ向けての参考になれば幸いです。
Q 眼科医の仕事の内容は?
A 人間が外部から得る情報のうち80%は眼から得られているといわれているが、人間にとって重要な器官の一つである眼の病気の有無を調べ、病気があれば治療を行ったり、病気を予防するためのアドバイスを行ったりする。
治療は目薬の処方や手術の他、メガネやコンタクトレンズの処方、飲み薬の処方や点滴治療などを行うこともある。
Q 眼科医の仕事をしていて楽しいと思うことは?
A 治療を受け、見え方や症状が改善した患者さんの笑顔を見たり、喜びの声を耳にしたりすることで、人の役に立てていると実感すること。
眼科は見えるか見えないかなど治療の効果が患者さん自身ではっきり実感できる部分が大きいため、良い結果が出れば患者さんの喜びに直結する。
Q 眼科医の仕事をしていて大変なことは?
A どの科にも共通することだが、頑張って治療を行っても良い結果につながらないことがあること。
眼科は見えるか見えないかなど治療の効果が患者さん自身ではっきり実感できる部分が大きいため、良くない結果もはっきりと表に出てしまい、それが患者さんの不満に直結する。
どの科にも共通することだが、限られた時間の中で多くの患者さんの診察や治療や説明を行わなければならず、一人一人の患者さんに必ずしも十分な時間がかけられないという理想と現実のギャップに悩まされること。
Q 眼科医の仕事のやりがいは?
A 自分が行った仕事に対しての評価を患者さんの表情や言葉から直接知ることができることで、人の役に立てていること実感できること。
眼科は眼球という臓器に限定されるが、単独で診断から治療までを行うことができる(最後まで面倒を見てあげられる)ので、医療者としての満足感(自分が治してあげることができたという満足感)が得られやすいかもしれない(内科で診断して外科で手術をするという仕事を一人で行えるというイメージ)。
Q 眼科医の仕事に向いているのはどんな人?
A どの科にも共通することだが、誰かの役に立ちたい、世の中の役に立ちたいという気持ちを強く持ち、自分のことを二の次にしてでも誰かのために役に立ちたいという奉仕の精神が持てる人。
眼科の手術や処置については細かい仕事が多いので、細かい作業が得意な人、いわゆる手先が器用な人の方が成長は早いが、手術は、最終的には理論や知識や経験によるところが大きく、よっぽどの身体的なハンディキャップなどがなければ、勉強とトレーニングをコツコツ積み重ねればできるようになる。
今後、眼科の手術にもAI(人工知能)やロボットがどんどん普及してくるはずなので、手先の器用さというものは大きな意味をなさなくなると予想され、むしろAIやロボットの操作やそれらを応用することに成熟することの方が重要になると考えられる。
医療の分野も今後多くの部分がAIやロボットに置き換わっていくことになることが予想されるので、医療を行う人間は、AIやロボットには不可能なこと(人の心情を汲み取ることや人間らしい対話ができることのなど?)を補いながら、AIやロボットの技術を上手に調整し利用していくという立場になっていくのではないだろうか。
Q 眼科医の仕事につくための中学生へのアドバイス
A どの科にも共通することだが、医師になるためには、大学医学部を卒業し、医師国家試験に合格して医師免許を取得しなければならないので、まずは、つらく厳しい受験勉強に耐え競争に勝ち抜き医学部に合格しなければならない。
医学部は一般的に他の学部に比べて進級試験の難易度も高いため、日々の勉強を積み重ねなければ卒業することができず、医師国家試験を受験することができない。
医師国家試験に合格するためには、膨大な量の知識(受験勉強よりも知識量が求められるかもしれない)が必要となるため、国家試験対策も過酷である。
医師国家試験に合格し医師免許を取得して医師になっても、患者さんの期待に応えるためには、日々進歩し続ける医学の知識を吸収し続けるための努力を怠ることはできない。それ故に、早いうちから日々勉強をし続ける習慣を身につけておくことが非常に重要である。
病気には、休日や祝日、昼や夜は関係ないので、それに対応するために知力だけではなく体力も必要とされるので、早いうちから体を動かし体力をつける習慣を身につけておくことも重要である。
よりよい医療を患者さんに行って、人の役に立つ、世の中の役に立つためには、知識や技術(今後AIやロボットに置き換わられてしまう部分でもある)だけではなく、患者さんとの間で人間らしい心と心の対話を行える能力も必要となるので、日々様々な分野の読書を行ったり経験を積むなどして、人間性を高める、人間としての幅を広げる努力を続けることも重要である。
また、最終的にどの地域で仕事を行うにしても、若いうちから、高い視点から広い視野で世界を見渡す感覚を身に着けておくことも重要である。
今になって振り返ると、「ずいぶんと偉そうなことを言っているなあ。」と、自分でも恥ずかしくなるような部分もありますし、これまでの自分に対しての後悔も含まれています。返答した内容において、現在、自分自身が実現できていないことについては、自分への戒めとして、今後実現できるよう精進していきたいと思います。
今回のインタビューは、自分自身を改めて見つめ直す良い機会にもなりました。