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震災に想う

[2024.02.03]

 2024年2月2日で、開院して3年3か月が経過しました。この日までに、10629名の新規の患者様が来院され、3054件の手術(このうち白内障手術は3004件)を施行させていただきました。

 こちら北見市は、先週後半に市内の小中学校が2日間にわたって休校になったと思いきや、日中の最高気温が氷点下の真冬日を脱してプラス気温となり路面の雪が解け、その後再び暴風雪と目まぐるしく天候の変化が見られました。

 クリニックの敷地内の除雪を業者さんにお願いする関係で、天気予報における雪の予報をこまめにチェックしているのですが、予報通りにならないことも多く、あたふたすることもあります。

 とはいえ、能登半島地震で一瞬にして日常生活を奪われた方々のことを思い浮かべると、現時点で何気ない日常生活を送ることができていることがいかに幸せなことであるかを感じざるを得ません。

 能登半島地震から1か月が過ぎました。日々の報道によると、まだ復興は進んでおらず、被災された方々は、地元に残るのか、他の地域に避難するのかの選択を迫られているそうです。

 インターネット上では、他の地域に避難せず地元に残る方々に対して、「なぜ素直に応じないのか」、「残ることで他の人々に迷惑がかかることをなぜ考えないのか」など、痛烈に批判するコメントが非常に多く、それが多数派であるような印象すら受けます。

 しかしながら、自分が実際に被災しているわけでもなくあくまでも想像ですが、長きにわたって暮らしてきた場所を急に離れるということは一筋縄にはいかないように思います。住み慣れた地域、生涯をかけて築いてきた家、暮らし、仕事、人間関係など、年配の方であればあるほど簡単に捨て去ることはできないのではないでしょうか。

 震災から1か月、これから国、県、市、町、村が復興に動いてくれて、暮らしを再建できると信じているでしょうし、簡単に行き来ができないような遠方に避難してしまうと、自身の暮らしを再建するチャンスを失ってしまうのではないかという不安があるのではないかと想像します。

 一部の報道では、他の地域に避難する場合は移動する直前まで場所を教えてもらえないという話や、被災した建物に盗みに入る心無い人間もいるという話なども聞きます。そのような話を聞くと、尚更、二の足を踏んでしまうでしょうし、突然、見知らぬ地域に移住しても、それから先の暮らしも長期的に困難が待ち受けていることは想像に難くありません。むしろ地元に残るよりも困難が待ち受けていると考えてしまうかもしれません。

 人口が少ない地域だからとか、人口が減少する地域だからとか、高齢者ばかりの地域だからとかといった理由で、復興や支援の濃淡ができてしまうことがないように願いたいものです。人口の少ない地域であっても、その地域のいろいろな意味での資源、産業などが他の地域や国全体の暮らしを支えていることはあるはずで、その地域への支援を疎かにしたり切り捨てたりした場合、長期的には国全体の衰退につながっていくかもしれません。

 医療の分野でも、今後、医師にも厳格な「働き方改革」が導入されようとしています。それに伴い、これまで使命感や奉仕の精神で賄われていた時間外勤務が法的に行うことができなくなり、全国各地の病院で、医師の撤退、診療時間の縮小、患者受け入れの拒否などの動きが起こっています。そうなると、人口の少ない地域ほど打撃を受け、必要な医療が受けられなくなっていきます。

 新しい「初期臨床研修医制度」が2004年にスタートしてから、医師の都市部への偏在が加速している中、「働き方改革」の導入によって、さらに医師の偏在に拍車がかかる可能性があります。

 そういった懸念に対して、必ず出てくる意見が、「医療を受けられなくなることが嫌なら、都会に移住すればよい」といった意見ですが、先に書きましたように、住み慣れた地域を離れることは、それぞれの人にとって簡単なことではありません。

 人口減少、少子高齢化の中にあっても、未来に向けて、医療に限らず、どの地域に住んでいる人でも、平等に行政のサービスが受けられる国であり続けてほしいものです。

 さて今回の震災では、日本国内の眼科医を取りまとめている組織である『日本眼科医会』も様々な支援を行っているそうです。表記のある範囲内では、日本眼科用剤協会、日本コンタクトレンズ協会、東京眼鏡店販売協同組合などの協力を得て、点眼薬、コンタクトレンズ、災害時用の眼鏡(既成老眼鏡350本、既成近視眼鏡250本の合計600本)などの被災者への配布などを行っているとのことです。

 また、日本眼科医会は、ビジョンバン(車内で眼科の診察を行える、移動眼科診察室としての機能を持った自動車で、先の東日本大震災を機に導入された)を所有しており、今回、能登の地にも派遣され眼科診療を行っているそうです。

 災害時、命を救う医療に直接携わることの少ない眼科医は、ほとんど無力であると言えるかもしれませんが、災害で眼鏡やコンタクトレンズを失うことで生活に大きな支障をきたすことはありますし、点眼薬を継続する必要のある目の病気を抱えている患者さんはたくさんいらっしゃいます。避難生活が長期になればなるほど眼科医療の必要性も増してくるといえます。命を救うことのできない、たかが眼科であっても、少しは役に立てる部分はあるかもしれません。

 細かい点では、コンタクトレンズは衛生管理が非常に重要ですが、災害時には、洗浄液、保存液、容器、予備のコンタクトレンズなどが不足することが予想されます。コンタクトレンズが不潔な状態で装用を続けると失明につながる重大な目の病気につながっていきます。それ故に、コンタクトレンズを使用できないときのために眼鏡を常に用意しておくことは重要なポイントです。

 災害時に限らず、普段の生活においても目の調子が悪くなった場合にコンタクトレンズを無理して装用し続けることは危険ですので、コンタクトレンズ装用を休止して眼鏡で代用するという意識は大切です。

 今回能登半島地震で被災されたすべての方が、一日でも早く、平穏な日常を取り戻せること、平穏な日常に少しでも近づけることを心より祈っております。

 

 

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